「夏は受験の天王山」といわれています。中学受験にチャレンジする小学生にとって、まとまった勉強時間を確保できる夏休みは、合否を左右する大切な期間であることは間違いありません。
そんな大切な夏休みに実施されるサピックスの夏期講習。無駄にはしたくないですよね。この記事ではサピックスの算数科講師を20年以上務めた経験から、夏期講習中の取り組み方を紹介します。
夏期講習の前までに前期の内容を復習
まずは夏期講習に入る前に、6年生の前期で習った内容をしっかり身につけておきましょう。算数は前に習ったことの上に次に習うことが積み上がることで、できるようになっていく科目です。4年生、5年生、6年生前期で習ったことの上に6年生夏期講習の内容が積み上げられていくので、夏期講習が始まるまでにそれまでの学習内容をしっかりと身につけておくといいですね。
具体的には、苦手な単元の平常授業のテキストを、時間のある限り解き直しましょう。
たとえば「数の問題」が苦手であれば、平常授業の「数の性質」「小数・分数」などのテキストを解き直し、解法が身についているか確認しましょう。
サピックスで配布されている「年間学習表」の冊子に年間のカリキュラムが掲載されていますので、参考にするといいですね。
また、「平面図形」が苦手であれば、土曜特訓の分野別補充プリントを復習しておくのもおすすめです。前期の土特で学習する分野別プリントは平面図形の最重要分野です。完璧にマスターしたうえで夏期講習に臨みましょう。
特に苦手な単元がない場合は、4月以降のデイリーサポートに掲載されている立体切断のプリントを復習しておくことをおすすめします。立体切断に関しては志望校によって優先順位が変わるので、迷ったときには塾の先生や家庭教師の先生に相談するといいでしょう。
毎日の基礎力トレーニングには必ず取り組む
ハードスケジュールの夏期講習ですが、算数の基礎力トレーニングは休まずに取り組みましょう。時間を決めて、所要時間も計って取り組みます。
日々の基礎力トレーニングでまちがえた問題はしっかりマークをつけておくようにしましょう。秋以降に時間を見つけて、自分の弱点を克服していくのにとても有効です。
サピックスの授業に集中する
夏期講習中にもっとも大切なのは「授業に集中すること」です。
6年夏期講習の算数では、デイリーチェックが毎日あります。今日学習した内容は、翌日のデイリーチェックで身についているか試されるのです。何度も何度も反復して練習したり、週末に動画を見て理解不足を補ったりする時間はありません。授業の解説をしっかり聞いて授業中にできる限り習得してしまう必要があります。
授業に集中するためには、十分な睡眠と栄養、規則正しい生活が不可欠です。この点はご家庭でのフォローが大切になります。「夜遅くまで勉強して授業に集中できない→授業に集中していない分は家庭学習で取り戻そうと夜中まで勉強する」といった悪循環に陥らないように気をつけましょう。
中学受験をするのは小学生。十分な睡眠が必要です!もちろん勉強以外で夜更かしするのもNGです!
家庭学習では算数をメインに据えて学習スケジュールを立てる
6年生の夏期講習前でも、おそらく多くの受験生が算数の学習にもっとも多くの時間を割いていることと思います。実は、夏期講習中も同じように、算数の学習時間が最も多くなるのが一般的です。後から振り返ると「夏は算数ばかりやっていた」と感じるくらい、算数をしっかり学習したいですね。
デイリーチェックで8割以上を目標に
デイリーチェックは「L」「M」「H」というレベル別の3種類が用意されていて、クラスによって最適なレベルが選ばれるようになっています。
夏期講習中は習った単元のデイリーチェックが、すぐ次の日にあることは前述しました。このデイリーチェックで8割以上を得点できるように学習することが、夏期講習中の目標です。校舎によっては、毎日順位表を貼りだすなどして子供たちが競い合う環境を作り出していきます。コース昇降に反映されるテストになりますから、クラスアップを励みにがんばりたいですね。
それまで算数に苦戦していた生徒さんでも、この夏のデイリーチェックで常に8割以上を取るほどの努力をした生徒さんは、入試でも良い結果であることが多い傾向があります。まさに「夏は受験の天王山」。夏期講習中が算数の最後のがんばりどころとなるので、お子さんにもその意識を持ってもらえるように声掛けができるといいですね。
8割目標はあくまで目安です。単元によっては8割を達成するのは非常に難しいものもあります。特にレベルHのプリントは難易度が高いので7割の目標でもいいかもしれません。お子さんの習熟度によって異なりますので、目標点数に迷う場合はお通いの校舎の担当の先生に相談してください。
具体的な復習の仕方
夏期講習の授業で使うプリントは平常授業と変わりありません。「導入と基本」「アプローチ」「実戦編A~E」「立体切断」といった内容が収録されている「サマーサポート」という教材と、その類題である「サマーサピックス」という教材です。
平常授業ではデイリーチェックまでに1週間あるので、授業で習ったことを実戦編と冊子の類題で反復練習して習得していきます。しかし、夏期講習では次の日にデイリーチェックがあるため、かなりのハードスケジュールとなります。
まずは当日、帰宅して夕食や入浴を済ませたあと、すぐに「サマーサポート」の「実戦編」を解きましょう。基礎に不安が残る生徒さんは「導入と基本」から解くといいですね。このときに、「解説を聞いてやっと解法がわかった」問題を優先します。時間がなければ「授業中に正解できた」問題は翌日でもいいでしょう。
翌日の午前中は、前日の夜に解いた問題も含めて、担当の先生から指示された「サマーサポート」の問題をひと通り解きます。この時点で間違えた問題は、他教科の勉強をしたあと、「サマーサピックス」という冊子に掲載されている類題でもう一度解き直しをしましょう。
普段より復習時間がないことは担当する先生もわかっているので、次の日のデイリーチェックに出る問題を中心に授業をしてくれます。時間がギリギリの場合は、ひとまず授業中に扱った問題だけを練習するといいと思います。それ以外の問題は講習のない日に取り組むといいですね。
また、後半の立体切断のプリントも余裕があれば取り組みましょう。講習のない日に取り組むようにしてもいいでしょう。
デイリーチェックの大問1
平常授業と大きく異なるのが夏期講習中のデイリーチェックの大問1です。平常授業のデイリーチェックの場合、大問1は日々取り組んでいる基礎力トレーニングの類題になっています。しかし、夏期講習中のデイリーチェックの大問1は基礎力トレーニングからの出題ではなく、いわゆる一般的な入試問題の前半に出題される一行問題の良問が集められているのです。
範囲があるわけではないので、この大問1についての対策はありません。重要なのは、解き直しです。忘れている解法や、習得できていない解法を見つける好機となりますので、不正解だったものは丁寧に解き直し、9月に入る前にまとめてもう一度おさらいしておくのも効果的です。忘れずに取り組んでください。
教材をしっかり保管して、秋以降も復習
夏期講習のテキストに必死で取り組んだ後は、6年前期のテキストと同様に、きちんと保管しておきましょう。9月以降のサピックスオープンや公開模試などで、弱点が見つかったときに学習する良い材料になります。
たとえば9月以降のテストや志望校の過去問で、いつも「速さ」の問題で不正解になっている場合、前期の「速さ」のテキストや夏期講習の「速さ」のテキストを解き直して解法を再度確認します。このときの最良の材料が過去に学習したプリントなのです。くれぐれも秋以降に別の問題集で弱点補強しないように気を付けましょう。すでに何度も解いてきたプリントをもう一度復習することで、解法が定着していきます。そのために、前期と夏期のテキスト類は大切に保管しておいて、いつでも使用できるようにしてあげてください。
まとめ
筆者の息子二人もサピックスに通って中学受験にチャレンジしました。その思い出の中でも夏はやはり特別です。毎日のデイリーチェックに必死で臨み、カレンダーに点数を記入して目標達成に向けてモチベーションを維持させていました。海にも行かず、山にも行かずに、ひたすら志望校合格に向けて頑張った夏休みは息子たちにとっても大事な思い出となっているようです。合格に向けた大事な夏を頑張る受験生に、心からエールを送ります!
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