中学受験の要である算数。それだけにしっかり学習しなければならない教科なのですが、「どのように復習すれば力が伸びるのですか?」というご質問をよくいただきます。この記事では、「算数の力を伸ばしたい!」「算数の偏差値を上げたい!」とがんばる中学受験生のための、効果的な復習方法を紹介します。
授業の受け方|復習の前に、まずはしっかり授業を受けることが大切!
「効果的な復習」の前に大切なことは、塾でしっかりと授業を受けてくることです。授業をしっかり受けずに復習だけで成績を上げようとするのは、砂上に楼閣を築こうとするようなもの。まずは、授業の受け方を見直してみましょう。
先生の大事な話はメモしよう
中学受験生は一般的に、「先生が黒板に書いたことを写す」という意識を持っています。逆に言うと、「黒板に書かれていないことでも大切だなと感じたことについてはメモしておこう」という発想はほとんどないということです。中学受験生は小学生。メモを取ることの重要性を知っている大人にとっては驚くようなことではありますが、これが“普通”の小学生の姿なのですね。
ですから、まずはメモを取る意識をしっかり持ちましょう。先生が板書した内容で自分にとって必要なものを写しながら、先生が話したことのなかから大事なことを聞き取ってメモを取ることで、授業の効果を高めたいですね。
筆者が集団塾で授業をしていたときは、「板書を写すだけなら、市販の参考書の解説と同じ。先生があなたたちに向けて話していることこそ、参考書にはない大事なことだよ」と話していました。ぜひ、お子さんが授業に向かう前に、このように声をかけてあげてください。
図を写そう
先生の板書のうち自分に必要なものをノートに写していくなかで、子どもたちは「式」を書くだけで終わってしまうことがよくあります。
算数を解く手順は以下の通りです。
- 問題を読む
- 問題に書かれていることを整理する
- 問題の解き方を見つける
- 式を立てて計算する
このように、式を書いて計算するのは、手順後半の作業になります。
実は、前半部分の「問題を整理→解き方を見つける」までのほうが、後半の「式を立てて計算する」よりも難しい場合が多いのです。
この前半部分で活用するのが「線分図」「面積図」などの「図」です。(もちろん、平面図形や立体図形といった「図」そのものの出題であれば「平面図」「立体の見取り図」「立体の投影図」などがダイレクトに必要になります)
この大事な図を、塾の先生は板書してくれます。この図の書き方をしっかりマスターするために授業中にノートを取ってほしいのです。問題によっては図がしっかりかけていれば、その後の式は自ずと導き出されるので、式を写して帰ってこなくても問題ない場合もあります。式よりも図の方が大事な場面があるのですね。
お子さんの授業ノートに図が書かれているか、ぜひ確認してみてください。
先生に指示される優先順位を必ず守る
一般的に、中学受験の大手塾のテキストには膨大な量の問題が載っています。「しっかり復習する」というと、「全ての問題を満遍なく復習すること」のような気がします。
しかし、実際はそうではありません。受験生によっては、「全てを満遍なく復習する」のは、むしろよくない復習方法だと言える場合もあります。
多くの大手塾ではクラスの生徒さんの学習到達度に合わせて最適な課題を選んでくれます。ですから、取り組む問題の優先順位の指示を、しっかりメモして帰ってきましょう。「ここは大事だからできるようにしておこうね」と言われたところをしっかりマスターするように学習し、その他は余裕があったときに取り組むような意識がよいと思います。
6年生になったら自分オリジナルの優先順位もつけよう
6年生になると、それまでとは比べものにならないほど膨大な量に取り組まなければならなくなります。そこで、先生からクラス全体に指示された優先順位だけでなく、自分オリジナルの優先順位を授業中につけられるようにするといいですね。
明確な決まりはありませんが、授業中に取り組んだ問題を以下のように仕分けするといいですね。
- 授業中に正解できて、先生の解き方も同じだった問題→◎
- 授業中に正解できたが、別解があったり偶然正解してしまったりといった問題→△
- 授業中に不正解だったが、ケアレスミスだった→〇
- 授業中に不正解で、解説を聞いてやっと解法が分かった問題→×
この場合、復習は優先度の高い順に「×→△→○→◎」となります。このように自分の状況にあったオリジナルの優先順位をつけておけば、まず×マークのところを反復して習得し、時間が余れば△、次に〇といった順序で復習ができ、弱点をしっかり補強する学習ができます。
授業中に完璧に仕分けをするのは難しいかもしれません。ただ、6年生ならある程度はできるようにしておくと効果的な復習につながります。
反復練習|正しい意識で繰り返し解くことが大切
算数を習得するには反復練習が欠かせません。特に基本的で重要な解法を含んだ問題は短時間で正確に解けるようになるまで繰り返し練習するようにしましょう。ただし、闇雲に反復したのでは、効果は半減してしまいます。正しい意識で繰り返し練習することで、力をつけましょう。
週に2~3回は反復する
反復すべき問題を、週に1回まとめて取り組むのはおすすめできません。1週間のうちの通塾のない日に、何回かに分けて取り組むのがいいでしょう。
一度間違えた問題や、解法がわからずに解説を読んだ問題は1~2日間をあけて、2~3回反復することで定着していきます。その際、全く同じ問題ではなくて、同じ問題の数値替えがあれば、そちらで練習するのがいいでしょう。
設問を読んでから解答までの筋道を追いながら反復
反復練習する際には、「暗記」になってしまわないよう注意しましょう。
何度も同じ問題を解いていると、ただただ答えを出す計算方法だけを暗記してしまいがちです。しかし、塾のテキストにある問題と全く同じ問題は入試ではほとんど出題されません。切り口を変えて、視点を変えて、また複合して問題が作成されます。その際に反復練習したテクニックを使えるようになることを目標にするといいでしょう。
そのために大切なことは、毎回の反復練習の際に問題文からその計算式に至るまでの筋道をしっかり追うことです。筆者は生徒さんに「自分より年下の子に、その問題の解き方を説明してあげるつもりで解いていくといいよ」と話しています。こう意識することで、問題文を読んでから答えを出すまでの筋道をしっかり追えるようになります。
思考力問題や応用問題よりも基本問題の反復を優先
反復練習の効果が高いのは基本問題です。あまりに応用的要素の高い問題は、その問題ならではの「気づき」が必要である場合が多く、その「気づき」は汎用性があまりないことが多くあります。基本的解法を反復練習で習得し、どんな場面でそのテクニックを使ったらいいのかは、6年後期の塾でのアウトプットのための演習や、過去問の取り組みで習得していきましょう。
丸つけのルール|効果的な丸つけで成果をあげる
自宅で復習する時には「〇」や「×」のつけ方も重要です。基本のやり方を身につけてもらい、6年生になったら自分でできるようにしていきたいですね。
「赤〇」「赤×」「青〇」「青×」の使い分け
筆者は以下のように丸つけすることを提案しています。
- 自分で解いて正解した→赤で〇
- 自分で解いて不正解だった→赤で×
- 間違えた問題を自分で解き直して正解した→青で〇
- 間違えた問題を自分で解き直して不正解だった→青で×
このように問題に対する取り組みの結果が把握できる状態にしましょう。
解説を読む
青で「×」がついた問題は、授業ノートに写してきた解法や、テキストの解答解説を読んで解き方を理解しましょう。解き方を理解したら、ノートや解説を見ないで再現できるか確認しましょう。再現できたものは、1~2日間をあけて再度取り組むと定着していきます。
先生に質問する
解説を見ても解き方がわからない問題は、塾や家庭教師の先生に質問するようにしましょう。できるだけすぐに質問できるといいですね。
質問した問題はそのままでは定着しません。質問したその日にまずは1回、何も見ないで一人で解き直せるか確認しておきましょう。そして1~2日の間隔をあけて2~3回反復するといいでしょう。
思考力問題や応用問題の扱い方
思考力問題や応用問題は、反復して習得しなければならない問題というよりは、反復して身につけた解法のアウトプットの仕方を学ぶ問題です。
ご家庭では、1問につき10分~15分程度の時間制限を設けて、時間内は頑張って考える練習をしてもらい、それ以上の時間をかけずに解説を読んで理解するのにとどめるといった取り組み方にするといいでしょう。「すぐには解けない問題に悩む練習」「手を動かして解き口を見つける練習」だと思ってください。
こういった思考力問題や応用問題は、基本問題の習得がままならない状態で取り組む必要はありません。基本問題の反復練習が終わって、時間に余裕があるようでしたら取り組んでみてください。
テスト直しの仕方|効果的な復習に取り組むチャンス
塾で毎週・毎月実施される復習テストや公開模試は、テスト自体よりも振り返りが大切です。
テスト直しのタイミング
テスト直しのタイミングは、そのテストの実施日から1週間以内がよいでしょう。解いたときの感覚が残っているうちに解き直しをするようにすると高い効果を期待できます。
テスト直しは全問でなくていい
テスト直しをするときは、まず解答を見て丸付けをしてください。自己採点です。その後、お子さん自身が「ここは出来たと思ったのに」と思った問題から直しをしてもらいましょう。
このとき、いきなりもう一度解き直してはいけません。まずはテストの際に書き込んだ図や式から、「どこが間違っていたか」を探してもらってください。ここがとても大切です。
「解き方は合っていたけれど計算で間違えた」や「問題文を読み間違えていた」など、間違いがどこにあったのかがわかれば次につながります。お子さん自身の言葉で間違った原因を書き込むのも有効な振り返りですね。
また、時間不足で解き切れなかったと思われる問題をもう一度解いてみましょう。こうした問題の解き直しは、テストの際に「どの問題から解くべきだったか」や「どの問題を飛ばせばよかったか」などを考える重要なポイントです。お子さん自身が自分の強みや弱点を知って、次に活かせるような直しを促してあげてください。
残りの問題は「受験生全体の正答率」で仕分けして直しをすることをおすすめします。大手の塾であれば、テストのたびに各問題の正答率を公表しています。これを参考にするといいですね。
正答率があまりにも低い問題は直しの必要はありません。たとえば「正答率20%以下の問題は解き直しをしない」と決めてしまえば、短時間で復習を進めることができます。
ただし、何%以下をカットするのかは、そのテストの難易度や母集団、志望校のレベル、お子さんの学習到達度などを考慮しなければならないため、一概には決められません。お通いの塾の先生や、家庭教師の先生などに分析してもらったうえで決められるといいですね。
それでも、おおまかに目安をお伝えするとすれば、どのお子さんも正答率40%以上の問題は必ず直しが必要で、正答率が10%以下のものは直す必要はないと思います。
テスト間違い直しノートの作成
正答率が40%以上でお子さんが間違えた問題はテストの直後に直しをするだけでなく、1か月後や2か月後にもう一度解いてみると学習効果を高められます。そのためにぜひ「テスト間違い直しノート」を作ってみてください。
問題をコピーしてノートに貼り、実施した日付などを書いて整理しておきましょう。解くスペースも確保して、1ページに1~2問程度の貼り付けにすると学習しやすいです。解答も次のページや別冊などに整理しておいて、すぐに答え合わせができる状態が望ましいです。
作ったノートはコピーして解き直しをしていくと何度も練習することができます。解き直した日付と、正解だったのか不正解だったのかも書き込んでおくと、お子さんの弱点がひとめでわかるオリジナル問題集ができあがります。最近は、お子さんの文字を認識して消したうえでPDF化できるアプリもありますので便利ですね。
まとめ
中学受験生のための算数の復習の仕方をご紹介しました。同じ時間学習しても、取り組み方法によって学力の伸びは変わってきます。日々の学習が最大限効果的なものになるよう、この記事がお役に立てばうれしく思います。
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