サピックスでは5年生までに、中学入試の全分野の基礎的な内容を習得するカリキュラムが組まれています。そうだとはいえ、新6年生になったばかりの2月に、入試問題がすらすら解ける力がついているわけではありません。
実際は、5年生までに積み上げてきた基礎学力を土台に、6年生の1年間をかけて志望校に合格できる力をつけていきます。
今回は前期(夏期講習が始まる前まで)の学習ポイントをお伝えします。
算数の6年生前期学習の位置づけ|中学入試合格に必要な基本的な解法の習得
サピックスのカリキュラムは4年生と5年生で中学入試の内容の1周目を終え、6年生では少しずつ1回に学ぶ範囲を広くしながら何周かしていくように設計されています。いわゆる「スパイラル学習」ですね。
たとえば、5年生では「旅人算」「通過算」「流水算」と分けていたものを6年生では「速さ」という少し広い範囲で捉え直して学習していきます。また、「相当算」「倍数算」「仕事算」と分けて学習していたものについては、「割合」という広い範囲で捉え直して学習していくことになります。
広い範囲になるということは、子ども達は「どの問題にどの解法を使うのか」を自分で考えなければならないということです。
5年生までのテキストには「つるかめ算」といったタイトルがついていましたから、「そうか、今回の授業ではつるかめ算を使えばいいのだな」とわかりました。6年生になると「つるかめ算」を使うべきなのか、「和差算」を使うべきなのか自体を自分で判断しなければならなくなります。このように少しずつ難易度を上げながら、何周もしていくわけですね。
6年前期の算数は「スパイラル学習の2周目」といったイメージ。3周目に入る夏期講習前に、基礎的な部分をしっかり固める時期です。反復練習でがっちりと算数の土台を作っていきましょう。
平常授業の内容|授業時間はほぼ全てB授業
先ほどお伝えしたように、6年生前期の算数は「スパイラル学習の2周目」です。この内容は火曜日と木曜日に実施される平常授業で扱われます。(6年生からスタートする「土曜特訓」はスパイラル方式のカリキュラムとは別の側面からの授業展開になります。詳しくは後述します)
6年の平常授業で扱うプリントは以下の通りです。
- デイリーサポート…授業および家庭学習で使用するプリント
- デイリーサピックス…家庭学習で使用するプリント
- デイリーチェック…前週の復習テスト
5年生の時と大きく変わるのは「デイリーサポート」という教材から「復習と演習」がなくなるという点です。
5年生まではB授業で「アプローチ」を使ってその週の単元を習い、自宅で反復練習をした後、次週のA授業で「復習と演習」のプリントを使って復習をし、「デイリーチェック」で確認テストをするといった流れでした。
6年生の「デイリーサポート」には「復習と演習」はありません。「デイリーチェック」で前週の内容が定着しているかどうかのテストはA授業内で引き続きあるのですが、授業内でもう一度前の週に習ったことをおさらいしてもらえる時間がなくなります。A授業の「デイリーチェック」以外の時間は実質的にはB授業となり、A授業もB授業も、その週の単元をやっていくスタイルに変更されます。つまり、復習は全て自宅でやらなければならないということですね。
6年生になると多くの校舎が、平常授業の得点でのコース昇降を実施します。算数のデイリーチェックはその得点対象となっていますので、8割以上を目標に学習していきましょう。
土曜特訓(土特)の授業内容|図形の特訓とアウトプットの練習
6年生になってから新たに登場するのが、この土曜特訓です。土曜特訓とは、土曜日14:00~19:00に実施される授業で、1日に75分ずつ4教科を学習します。
土曜特訓は志望校別のコース編成になりますが、6年生の前期はまだまだ「志望校の対策」に取り掛かれる状況にない生徒さんが多く、実質的には成績順にコースを分けて基礎固めをするといった校舎がほとんどです。
こうしたなか、算数の前期の土曜特訓では主に「図形問題の強化」と「アウトプットの練習」に取り組んでいきます。
中学入試の算数では図形問題の比重がとても高く、平常授業だけでは対策が不十分な場合が多いので、土曜特訓で補強するのですね。このときに使用するプリントは「分野別補充プリント」です。「分野別」と名前が付いていますが、実際は図形に特化したプリントになっています。
「分野別補充プリント」以外の使用プリントは校舎やコースによってさまざまですが、概ね「アウトプットの練習」のためのプリントです。ライバル達がいるコースで競い合える環境を活かしてアウトプットの練習を始めていきましょう。
平常授業と土曜特訓はどちらが大事?|平常授業が優先順位第1位!
平常授業と土曜特訓のどちらがより重要かと言えば、間違いなく平常授業です。
中学入試の全分野を前期に取り扱いますし、毎月のマンスリーテストの範囲も平常授業中心です。迷ったら、まずは平常授業を優先しましょう。
ただし、土曜特訓の「分野別補充プリント」という平面図形のプリントもしっかり取り組みたいプリントです。平常授業の復習をしっかりしたうえで、このプリントの復習もできるといいですね。
「平常授業が最優先」なのは前期までになります。後期は優先順位が異なるので注意が必要です。
家庭学習の取り組み方|復習テストのあるプリントは反復して完璧に
家庭学習では、前述したようにまずは平常授業の復習を優先して行いましょう。
具体的には「アプローチ」で授業のおさらいをします。次に「実戦編A~E」の指定された範囲に取り組みます。1度解いただけでは習得できないのが普通ですので、コピーをしたり、ノートに解いたりして複数回取り組めるといいでしょう。
同じプリントでは解答を覚えてしまうという場合は「デイリーサピックス」という冊子の方を利用するといいでしょう。「実戦編A~E」の数値換えになっています。
しっかり復習できているかどうかは、毎回の授業で実施される「デイリーチェック」という復習テストの点数で判断できます。6年生は「デイリーチェック」が200点満点になりますので、160点を合格ラインとして、このラインを越えていなければ復習が不足しているのだと考えて差し支えありません。反復練習の回数を増やすなどの対策をして、しっかり合格ラインの点数をとれるようにしていきましょう。
平常授業の復習にしっかり取り組んだうえで、土曜特訓の「分野別補充プリント」の復習に取り組みましょう。こちらは概ね4問程度ですので、一回の復習時間は15分程度です。一週間で2回~3回解くと定着します。次の土曜特訓の授業内で復習テストが実施されるはずですので、こちらは満点目指して取り組むといいですね。
上記以外のプリントは、授業中に間違えた問題を直すだけで十分でしょう。
なお、算数が得意で、上記の内容以外にも取り組む余裕のある生徒さんは、担当の先生に相談して、さらなるレベルアップ教材に取り組むことをお勧めします。
「立体切断」プリントの扱い方|余力があれば「立体切断」のプリントにも取り組みましょう
春期講習が終わったあたりから、平常授業の「デイリーサポート」に「立体切断」のプリントが追加されます。
立方体を指定された3点を通る平面で切った時の、切断面の形を考える問題からスタートして、切断した後の体積を求めたり、2回切断したあとの体積を求めたりする難易度の高い問題までさまざまなパターンの「立体切断」の問題に取り組みます。
この「立体切断」は習得するのが大変難しいのですが、難関校での出題頻度は高めです。サピックス偏差値55以上の学校を志望する生徒さんにとっては必要なテックニックと言えます。
優先順位は「実戦編A~E」「分野別補充プリント」の次になります。時間に余裕があれば毎週取り組むようにしてみてください。
6年生前期の算数についてよくある質問
6年生前期の算数について、よく寄せられる質問をご紹介します。
Q:6年生で算数の学習時間は1週間にどれくらい必要でしょうか?
A:家庭での必要な学習時間は、個人差があるので一概には言えません。計算スピードの速いお子さんと、ゆっくりなお子さんでは同じ課題に取り組むにしても、かなりの時間差があります。それでもあえて目安の時間をお伝えするなら、1週間に5~6時間程度は必要だと考えています。これはあくまで「サピックスの6年生前期の家庭学習時間」です。後期については異なります。
Q:基礎力トレーニング(基礎トレ)は何分くらいで終わらせればよいでしょうか?
A:目安は15分です。「速いお子さんは5分」「ゆっくりなお子さんであれば20分くらい」と差があります。少しずつスピードアップできるようにタイマーで時間を計って取り組むといいですね。ただ、速くこなすことだけが目的となり、雑にならないように気をつけましょう。精度とスピードを両立することが大切です。
Q:範囲のない組分けテストで点がとれません。どうしたらいいでしょうか?
A:毎週のデイリーチェックや、範囲のあるマンスリーテストで得点できているのであれば、学習した内容は定着していると考えられるので大きな心配は要りません。
範囲のないテストではどの問題にどの解法を使ったらいいのかを考える必要があるので、難易度が高くなります。つまり、範囲のないテストで得点できないということは、アウトプットの練習が足りていないということですね。
本格的なアウトプットの練習は9月からになります。前期のあいだは焦らず、正解を出せなかった問題の解法を確認し、ていねいに解き直しをしましょう。間違えた問題をコピーしてノートに貼る「間違い直しノート」を作成して、少し間をあけてからもう一度解き直してみるのも力がつきます。試してみてください。
Q:授業前に実施される「基礎力定着テスト」の重要度と家庭での取り組み方を教えてください。
A:前期のあいだは「基礎力定着テスト」(授業前テスト)の間違い直しは大切です。夏期講習前まではしっかり取り組むといいでしょう。このプリントは2週間前の平常授業の内容の数値変えです。2週間前の「デイリーサポート」の内容をしっかり定着させるために有効な教材ですので、サピックスでしっかり取り組み、自宅で間違い直しをしましょう。
ただし、このプリントには難易度が非常に高く、クラスによっては授業内で扱わなかった問題も含まれる場合があります。その際には、その問題はカットして差し支えありません。授業で取り組んだ問題の類題をしっかり復習してください。
まとめ
- 算数の6年生前期学習の位置づけ…中学入試合格に必要な基本的な解法の習得
- 平常授業の内容…授業時間はほぼ全てB授業
- 土曜特訓(土特)の授業内容…図形の特訓とアウトプットの練習
- 平常授業と土曜特訓はどちらが大事?…平常授業が優先順位第1位!
- 家庭学習の取り組み方…復習テストのあるプリントは反復して完璧に
- 「立体切断」プリントの扱い方…余力があれば取り組みましょう
サピックスの6年生にとって、前期の算数が、9月からの志望校対策の土台となります。最重要の解法を学んでいきますので、焦らずに同じ問題を繰り返し解く時間を確保して、基礎を固めていきましょう。
コメント