中学受験に挑戦する過程で、誰も一度は必ず悩むこと。それは「どうしたらケアレスミスが減るのか?」です。がんばって学習しているのに、不注意によるミスで実力通りの点数にならないと悩んでいらっしゃるご家庭は多いと思います。「ケアレスミス」とは文字通り、「careless(注意不足)」による「mistake(まちがい)」です。不注意によって失点してしまうのではやりきれませんね。
この記事ではこのような受験生やご家庭のお役に立てるよう、算数のケアレスミスの種類や原因、具体的な対策をまとめます。
5種類のケアレスミス
まずは、どんなケアレスミスがあるのか考えてみたいと思います。
単純な計算ミス
単純に四則計算を間違えてしまうこともありますが、15×6や16×5といった、頻出する計算を間違えて覚えてしまっているケースも見られます。よく出てくる計算だけに、「覚え違い」をしてミスしてしまうケースです。
また、単純に28+17を35としてしまったり、180−65を125にしてしまったりといった、繰り上がりや繰り下がりによるミスもよくおこります。単純計算ミスは多岐にわたりますが、比較的「軽い計算」でのミスが多いのが特徴です。
数字の写しミス
問題文の数値を間違えて図や式に転記してしまうケースや、正しい答えまで辿り着いたのに解答欄に転記する際に間違えてしまうケース。どちらもまさに「不注意」によるミスです。

「6」と「0」などの転記ミスが多いので注意したいですね!
問題文の読み間違いや勘違い
「上流の甲地点からAが、下流の乙地点からBが同時に出発」などの問題で「Bが上流から出発、Aが下流から出発」と勘違いしてしまう。
「道の両側に木を植える」の問題で「両側」に意識がいかず、「道の片側だけに木を植える」と読み間違えてしまう。こうしたミスが「問題文の読み間違い、勘違い」にあたります。
問われていることとは異なることを答えてしまう(解答する内容を間違う)
「Aの現在の所持金を求めなさい」の問題で「Aのはじめの(変化が起こる前の)所持金」を答えてしまう。「兄は弟が出発してから何分で追いつきますか」の問題で「兄が出発してからの時間」を答えてしまう。こうしたミスは、正解は出せているのに、問われていることと違うことを答えてしまうケースです。
自分の字を読み間違う
上記で紹介した数字の転記ミスと似ていますが、自分が書いた「6」と「0」、「4」と「9」を読み間違って計算してしまう、または読み間違えて解答欄に書いてしまう。消しゴムで消したつもりがきちんと消せていなかったせいで「2」が「12」になってしまうなど、字や図が雑な生徒さんには頻発してしまうミスです。※「4」と「9」の読み間違いは、下のように乱雑な字を書くことでよく起きてしまいます。



ケアレスミスが起きてしまう原因は?
ケアレスミスが起こる原因は一つではありません。ここではケアレスミスの原因について整理してみたいと思います。
「ケアレスミス」と名のつくミスに対する認識の甘さ
まず原因のひとつとして考えられるのは、ケアレスミスを他のミスと区別して「本当はわかっていたし、たいしたことではない」ととらえてしまうことです。
「ミスしなければ本当はできた」「本当はもっと高い点数だった」と解釈してしまい、軽く考えしまうため、反省や対策を怠ってしまう生徒さんがたくさんいます。 ミスに対する認識の甘さは次のケアレスミスの原因となります。
字や図を雑に書いてしまう
「字や図が綺麗だから算数ができる、字や図が雑だと算数ができない」というわけではありません。しかし、字や作図を丁寧に書けるかどうかは、ケアレスミスとの相関性はかなり高いと感じます。字が汚なかったり、図が雑で線と数字が重なってしまっていたり、ということが多ければ当然計算間違いや、数字の見間違いが多くなります。字や図が雑であることは、ケアレスミスを増やしてしまう一因です。
キャパオーバーのスピードで解いている
入試は制限時間内の勝負であるため、解くスピードは遅いより速い方が良いのは明らかです。しかし、早く解いてもケアレスミスばかりしてしまうのでは、高得点は得られません。「どれぐらいのスピードであればミスなく解けるか」ということがわからず、自分の能力を超えたスピードで解いていこうとすることが、ケアレスミスの原因となっている場合があります。
問題文が読めていない(問題文を「目で見るだけ」に危機意識がない)
問題文は日本語です。それだけに生徒さんが「問題文を読むなんて、楽勝! だって日本語だもん」という意識を持ってしまう場合があります。しかし、算数のテスト問題では問題文を正確に読むのに、かなりのエネルギーが必要です。そのことに対する認識が甘く、「自分は読めている」という勘違いがケアレスミスの原因となっていることが多くあります。
四則計算の能力不足
基本的な計算力が不足していることがケアレスミスの原因という場合もあります。単純な四則計算は「呼吸をするようなレベル」で、当然のようにできるようになっていることが中学受験では求められています。
集中力の欠如(寝不足や心配事のせいで集中できない)
心身のコンディションの悪いことがケアレスミスの原因となっている場合もあります。代表的なコンディションの不調が睡眠不足です。「テストや授業の前日に遅くまで勉強してしまった」や「友達とのいざこざなどの心配事」、「クラス昇降に対する過度なストレス」なども心身を不調にし、ケアレスミスの原因となってしまうことがあります。
自分のミスパターンを把握していない
自分が「どんな時に、どんなタイプのミスをよくするのか」を把握していないことは、ケアレスミスの一因になります。
解く際に「計算スペースの使い方」に気を配っていない
テスト用紙の計算スペースの有効活用ができていないこともケアレスミスの原因となりえます。たっぷり余白が残っているのに、右下の隅の狭いところでゴチャゴチャと計算してミスをしている生徒さんはたくさんいます。逆に、はじめに大きな字で式を書きはじめてしまい、だんだん計算スペースが足りなくなってしまった結果、計算の終わりのほうで字がどんどん小さくなってしまい、ミスが起こることもあります。
ケアレスミスの対策
ケアレスミスの種類や原因を確認してきました。それでは、こうしたケアレスミスを防止するには、どのような対策をすればいいでしょうか。
式や図を丁寧に書く
まずは式や図を最適な大きさで丁寧に書けるように練習しましょう。雑な式や図は自分で自分に向けて落とし穴を作っているようなものです。綺麗で、誰が見ても見間違うことのない数字をスムーズに書けるようにすることはケアレスミス防止の第一歩です。
また、整然とした式や図は見直しをする際にも力を発揮します。短時間で正確に見直しできる式や図を目指して練習していきましょう。
自分の適正スピードを知る
日々の家庭学習や、塾での小テストの際に、「どのくらいのスピードだと、どのくらいの割合でミスが起きるのか」を把握するようにしてみましょう。ミスを起こさない最大限のスピードを自覚することでケアレスミスを減らすことができます。また、テストの際は、普段より少しスピードを落として解くのもケアレスミス防止に役立ちます。
問題文に○印をつけたり、線を引いたりして「わかったつもり」を防止
問題文の読み間違いを減らすには、軽い気持ちでさっと読んでしまうのを防がなくてはなりません。そのためには、まずは丸をつけたり、アンダーラインを引いたりして、注意深く読めるように工夫してみましょう。一文ごとにスラッシュを入れて、それぞれの文をしっかり理解しているかの確認をしながら読み進めるのもおすすめです。また、ご家庭では声を出して本文を読む(音読する)のも、正確に読む練習になります。
計算練習をする。逆算をして検算する習慣をつける。
単純計算ミスが多い生徒さんは、まず毎日の計算トレーニングにしっかり取り組み、計算力を上げていきましょう。その上で、検算の仕方も工夫していきましょう。
精度の高い検算は「逆算」です。引き算をした後には、足し算をして元の数字にもどるかどうか検算するのです。割り算をした後には、掛け算で元の数字にもどるか確認します。同じ計算を2度、3度とやっていてもミスに気がつかない場合があるので「逆算による検算」はおすすめです。
集中できない原因を探し、取り除く(睡眠、食事、心配事)
中学受験に挑むのは小学生です。睡眠不足や体調不良はダイレクトにテスト結果に影響します。必要な睡眠時間は個人差があるので、日頃から何時間の睡眠がベストなのか親子でしっかり確認をしておくといいですね。
また、お友達とのトラブルなどの心配事があると集中力に欠けてミスが多くなる場合もあります。心配事をとりのぞき、問題に全集中できる環境が作れるようにしてみましょう。
日々のトレーニングで、自分のミスパターンを書き出して「見える化」→ピンポイントで見直し
日々の学習の中でミスをした際に「ミスの原因」をメモするようにしてみましょう。ある期間続けると、自分のミスパターンが見えてくるはずです。テストの際には、その「頻発するミス」にフォーカスして、ピンポイントで見直しをかけるようにしてみましょう。
計算スペースの使い方を意識的に訓練
テスト用紙の計算スペースの使い方に気を配りましょう。ケアレスミスの多い生徒さんほど、たっぷり余白があるのに右下の狭いスペースしか使っていないことがよくあります。十分にスペースを有効活用できるよう、左上から式や図を順序よく整理して書けるように訓練していくとケアレスミス防止の役に立ちます。
家庭でやりがちな誤った対策
「なんとかケアレスミスを減らしたい!」と思うのは自然なことです。しかし、誤ったケアレスミス対策で状況の改善を期待するのは難しいものです。家庭でやってしまいがちな、よくないケアレスミス対策にはどのようなものがあるでしょうか。
ケアレスミス対策に過度な学習量を課す
ケアレスミスが多く、心配のあまり、過度な学習量を課してしまう場合がありますが、逆効果の場合が多いので気をつけましょう。ケアレスミスは心身のコンディションを良くすることで改善する場合も多いのです。たっぷりの睡眠と、健全な精神が保てる範囲の学習量でとどめておきましょう。
罰則や脅しによって得点アップを狙う
「70点以下だったら、お小遣いなし」といった罰則や「クラスが上がらなかったら塾をやめさせる」などの脅しはケアレスミス防止には逆効果です。「危機感からケアレスミスに気をつけてくれるようになるのでは?」と考えがちですが、過度なストレスとなり集中力が下がる場合が多いことを覚えておきましょう。
テストの最後にまとめて見直す時間を作ろうとする
「テストの際、最後の5分を見直しにあてる」というやり方でケアレスミスを防ごうとする生徒さんもいます。このやり方が一概にダメだとは思いませんが、最後の数分で、どこを見直していいのか迷ってしまったり、もう一度問題文を思い出すのに時間がかかり、うまく見直しができなかったりということが多いように思います。1問、1問、その都度見直しするほうが効果的かと思います。
ケアレスミスは、本当に単なる「ケアレス」か?
最後に根本的な問い、「ケアレスミスは単にケアレスによるものなのか?」についてお話ししたいと思います。
ケアレスミスと思われるミスも、実は学習不足の表れである場合があります。「覚えられる数字を覚えていない」や「反復練習が不足していて基本問題にも手間取る」などの状況では、時間も頭の中もいっぱいいっぱいで、注意力がミスの防止に向けられなくなってしまいます。このような時に起こるミスは「単なるケアレス」だけでなく「学習不足」による側面もあると言わざるを得ません。
この場合は、ケアレスミス対策の前に、学習量をしっかり確保して、典型題は短時間に解けるようになるまで練習をしましょう。テストの際に、簡単な問題は小さなエネルギーで解けるようにしておけば、ケアレスミス防止に使えるエネルギーが多くなります。
究極的には、「ケアレスミス」とどう向き合って、どう克服してきたかも中学入試では問われているということだと思います。
まとめ
簡単にはなくならないケアレスミス。この難題に辛抱強く向き合って、あきらめずに改善を重ねる生徒さんに大人は急かさずに寄り添って、誤った対策をすることなく励ましていきましょう。




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